【連載】ヨーガで体を壊さないために。第2回:【手首編】
実は、ヨガ業界でインストラクターにアンケートを取ると、ケガの経験があるインストラクターのそのケガ部位の1位は”手首”なんだそうです。
その当時、腰が1位かなと思っていたので、私にとって意外な結果でした。
そのプランク、手首の寿命を削っていませんか?
「プランクをすると手首が痛いけれど、続ければいつか強くなるはず……」 「逆立ちをすると手首に違和感が残る」 もしあなたがそう感じているなら、今すぐその考えを止めましょう。手首の痛みは、根性不足ではなく、あなたの体が上げている「悲鳴(拒絶反応)」です。

1. 手首は「全体重」を支えるようにはできていない
整体師の視点からお伝えすると、手首(手関節)は本来、指先の繊細な操作を司るための関節です。足首のように、全体重を支えるための強固な構造にはなっていません。
特にプランクやチャトランガのようなポーズでは、手首に強い圧迫力がかかります。この時、「手首のシワ」の部分にばかり荷重が乗ってしまうと、中を通る神経(正中神経)や腱を圧迫し、慢性的な腱鞘炎や、将来的に「手根管症候群(手の痺れ)」を招くリスクがあります。
2. 「手首のシワをマットと平行に」という指導の罠
多くのクラスで「手首のシワをマットの前縁と平行にして」と教えられます。しかし、人の骨格には個体差があります。前腕の骨の長さや捻じれ方は人それぞれです。
形だけを平行にしようとして、関節の中で骨同士がぶつかっている(インピンジメント)状態で体重をかけることほど、危険なことはありません。「正しい形」ではなく「安全なアライメント」を提示することこそが、指導者の役目です。
3. 今日からできるセルフチェック:手のひらの「アーチ」
手首を守るために最も重要なのは、手のひらの「アーチ」を使うことです。
人差し指と親指の付け根、そして指の腹でしっかりとマットを捉える(ハスタ・バンダ)。これにより、衝撃が手首一点に集中するのを防ぎ、前腕の筋肉を正しく使うことができます。
手首は小指側に負荷がかかりやすく、骨も弱いです。手を付くときは小指側に手が傾かないように気を付けましょう。
4. 指導の現場から:骨格特性に寄り添う「観る力」

現在レッスンに通ってくださっている30代の生徒さんの事例です。その方は学生時代の突き指の影響で、ダウンドッグの際に特定の指が伸びませんでした。
こういった場合、「できるだけ伸ばして!」と指示するのはNGです。骨格特性があるのなら、その中でどう心地よくポーズを行うかを導くのがインストラクターです。
痛みの有無を確認し、アーチが作れる他の指でカバーする。その答えが、『ヨーガ・スートラ』にある「アーサナの快適と安定(スティラ・スカ)」をつくれているか。インストラクターの皆さんも、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
最後に
あなたの手首は、一生使う大切な道具です。ヨーガをすることでその寿命を縮めてしまうことがないよう、今一度、自分の「土台」を見直してみませんか?
次回予告:【第3回:腰椎編】コブラのポーズ等の後屈について、腰椎を潰さないための具体的な指導方法をアップします!
【ヨガインストラクター 手塚えりか】 整体師歴22年、ヨガインストラクター歴18年。高野山大学大学院(密教学専攻)修士号取得。マタニティヨガ、アスリートヨガ指導、瞑想指導者資格保有。年間延べ9000人ほどの生徒を指導。 山梨県昭和町 yogaschoolTSUNAGU: https://tsunagu-yoga.com/