【第3回】ヨガにおける「苦行(タパス)」の真意:浄化とエネルギーの覚醒
ヨガの教えの中で、避けて通れない概念のひとつに「苦行(タパス)」があります。
現代では「自分を追い込む」といった過酷なイメージが先行しがちですが、これまでに解説した「シヴァとシャクティの統合」を目指す過程において、タパスには極めて重要な役割がありました。
今回は、古典ヨガとハタ・ヨガの視点から、その本質を紐解きます。
1. 『ヨーガ・スートラ』が定義する「浄化の熱」
ヨガの根本聖典である『ヨーガ・スートラ』において、苦行は「タパス」と呼ばれます。この言葉の語源には「熱する」という意味があります。
ここでの目的は、身体を痛めつけること自体ではなく、修練によって「熱」を生み出し、心身に蓄積した不浄(不純物)を焼き尽くすことにあります。
タパスを実践することで感覚が研ぎ澄まされ、その結果として超自然的な力(悉地)が現れると説かれています。
つまり、より高い瞑想の段階へ進み、エネルギーの通り道をきれいにするための「大掃除」がタパスの本質なのです。

2. ハタ・ヨガにおける「エネルギーの起動装置」
中世以降に発展したハタ・ヨガでは、より具体的な身体技法としてのタパスが重視されます。
呼吸法(プラーナーヤーマ)の中で息を止める「保息」などの行法は、古典的な記述でも非常に苦しいものとされています。
しかし、この厳しい鍛錬には、単に肉体を鍛えるだけでなく、体内の不純物を燃やし、眠っている「クンダリニー」を呼び覚ますトリガーとしての役割がありました。
*私のクラスで行うプラーナ―ヤーマは、苦しくなる手前で呼吸を始めるようにしています。あくまで、プラーナ―ヤーマはエネルギーの通り道の浄化であり、それ自体は苦行ではありません。
3. 現代におけるタパスの解釈
現代のヨガ実践において、極端な肉体的苦痛を強いる必要はありません。
しかし、日々の練習において「安きに流れない心」や、決められた修練を継続する「規律」を持つことは、現代版のタパスと言えます。
自分の中に正しい「熱」を起こし、シヴァとシャクティが統合されるための土壌を整えていくプロセスは、今も昔も変わらないヨガの本質なのです。