朝起きてから夜眠るまで、私たちは常に「誰か」とつながっています。
スマートフォンの画面を開けば、誰かがシェアした楽しそうな日常、誰かの意見、目まぐるしく変わる社会のニュースが飛び込んできます。
移動中や休憩中、ほんの少しの隙間時間にSNSをぼーっと眺めているときでさえ、それは自分の時間ではなく、誰かが発信した情報に意識が捕らわれている時間に過ぎません。

現代は、一人でいながらにして、決して「本当の一人」にはなれない時代なのだと感じます。
常に誰かと自分を比べてみたり、誰かの目を意識して合わせたり。
そうして外側にばかり向いている意識は、私たちが気づかないうちに心と身体をすり減らしています。
私たちの人生において、誰のためでもない、誰とも共有することのない時間を、一体どれだけ過ごせているでしょうか。
ヨガのレッスンは、まさにそんな時代の中で、意識的に「誰とも共有することのない時間」を過ごすために最適な場所だと考えます。
ヨガのマットの上は、誰かと競う場所でもなければ、誰かに評価される場所でもありません。
もちろん、SNSにアップして誰かにシェアするためのものでもありません。
ただ静かに目を閉じ、自分の呼吸の音に耳を澄ませ、身体の微細な感覚に意識を向けていく。
その時間だけは、外側の騒がしい世界から完全にプラグを抜いて、そっと一人になることができるのです。
古典ヨガの聖典『ヨーガ・スートラ』では、ヨガの本質を「心の止滅(しめつ)」、つまり頭の中のざわつきや思考のノイズを静めることだと言えると思います。
次から次へと溢れる情報に振り回され、波立ってしまった心の波を、自分の呼吸の手を借りて凪(なぎ)の状態へと戻していく。
これこそが、自分を自分で快適にする「自律」への第一歩です。
誰かとつながることが簡単になった今だからこそ、あえて「つながらない時間」を持つことには大きな価値があります。
誰の目も気にせず、とことん自分自身とだけ向き合う。
その静寂の中で初めて、私たちは自分が本当に感じていた疲れや、本当に大切にしたい想いに気づくことができるのです。

いつも誰かのためにがんばっている方、周囲に合わせて心が落ち着かない方こそ、一度すべての荷物を下ろして、静かに自分と向き合う時間を持ってみてください。マットの上で過ごす誰のためでもないその時間は、あなたの中に揺るがない静けさと、本当の快適さを取り戻してくれるはずです。