トリコナーサナで膝を痛める理由|過伸展のリスクと「ポーズへの執着」を見直す
先日、SNSで「ヨガをして膝を痛めてしまった」という投稿を目にしました。
投稿された方は何年もヨガを続けられており、非常に熱心に練習に取り組まれている方のようでした。ご自身の分析によると、「トリコナーサナ(三角のポーズ)をやりすぎたせいで膝を痛めた」とのことでした。
この「トリコナーサナと膝の痛み」は、決して珍しいケースではありません。
もともと関節が柔らかく、膝が本来のまっすぐな位置を超えて後ろに反ってしまう骨格特性(反張膝・過伸展)を持つこの写真のような方は、トリコナーサナのように脚を前後に開いて膝を伸ばすポーズで、関節に過度な負担をかけてしまいがちです。

膝が反りすぎて関節が「ガクッ」とロックした状態のまま体重を乗せてしまうと、膝関節の靭帯や軟骨、関節包に強い圧迫と牽引ストレスが加わり続けます。
そのため私のクラスでは、反りすぎやすい方には「膝をほんの少し緩めて、太ももの筋肉で支えながらポーズを取りましょう」と指導しています。
そもそも、ここには「ヨガをどう捉えているか」という根本的な問題が存在します。
指導者側が解剖学的なリスクを知らず、そうした安全指導が全くなされない場合もあります。
一方で、指導者が「膝を少し緩めて」と伝えていても、生徒さん側が「膝をピンとまっすぐ伸ばした方がポーズが綺麗に見える」「もっと深く倒れたい」という想いから、あえて緩めないことを選んでしまうケースも少なくありません。
また、マイソールクラスのようにご自身で自主的に練習を突き詰めていく環境では、より一層、完成形へのこだわりが強くなってしまうことがあります。
そしてそれは、一番大切なヨガの哲学である「執着を手放すこと(ヴァイラーギャ:離欲)」からは、かけ離れた行為になってしまっているように感じます。
一生懸命にヨガを突き詰めていく、その真摯な姿勢自体はとても素晴らしいものです。 しかし、そこには現代人特有の落とし穴があるのではないでしょうか。自分にとって「ちょうどいい安定した集中力」を見失い、ただひたすらにストイックに突き詰めてしまう。「もっと深めたい」「もっとできるようになりたい」という執着そのものをエンジンにして頑張りすぎてしまうことが、知らず知らずのうちに起きているように思えてなりません。
(我ながら、この執着がエンジンになるという表現はぴったりだと思います!)
さらに、指導者側の生徒さんの身体を観察する目の不足によって引き起こされる怪我もまた、大きな問題です。
骨格の個人差や関節の限界を見抜けないまま形だけを誘導してしまう現状は、今のヨガ業界全体で一度立ち止まり、みんなで考え直していかなければならないことだと強く感じています。
ヨガは、自分の身体を痛めつけてまでポーズを完成させるものではありません。
自分の骨格の特性を正しく知り、痛める手前で欲を手放し、関節を守る選択ができること。 熱心に練習を重ねている方こそ、一度立ち止まり、その頑張りが「執着」になっていないか、ご自身の心と身体を静かに観察してみてほしいと思います。